導入事例
ハウス食品株式会社のチェックシート電子化による業務効率化事例
- 会社名
- ハウス食品株式会社
- 設立
- 2013年4月22日
- 所在地
- 〒102−8560
東京都千代田区紀尾井町6番3号
- 従業員数
- 1,723名(2023年3月31日現在)
- 事業内容
- 食品製造加工ならびに販売、その他
3つの役割分担でスムーズに定着化、さらなる業務効率化で「働きがい変革」の実現へ
※本記事は一般社団法人日本能率協会主催「第18回食品安全シンポジウム」内のプログラム「現場帳票の電子化・DX推進による業務効率化」での発表内容をもとに作成しています。
会社紹介
ハウス食品株式会社は1913年に大阪で創業し、『食を通じて、家庭の幸せに役立つ』を企業理念に、カレーなどの香辛食品、スナック菓子、袋麺、各種レトルト食品などの製造・販売を行っています。
導入前の課題
XC-Gate(エクシーゲート)をまず導入したのはレトルトカレー工場で、導入する前に大きな課題が2つ存在していました。
(1)チェックシートの量が膨大で、1日に100枚もの紙が使用されていました。また、記録するまでの準備や承認作業、そして紙の保管が大変でした。
- チェックシートの内容がデータ化されていないため、チェック記録をもとに改善活動を行う場合は、まずExcelにデータを転記して集計・グラフ化しなければなりませんでした。
- 記録の流れとしては、①管理者が準備 ②作業者が記録 ③管理者が確認・承認し、保管するという3つの作業で行っており、①、③を担う管理者の方は1日90分もの時間が掛かっていました。
(2) お客様から商品に関するご指摘があった場合、過去のチェックシートを確認します。その際、保管場所まで行き、ファイリングされた紙のチェックシートを探すのに手間が掛かっていました。
- 保管場所にある膨大な量のファイルから、注視しながら該当のチェックシートを探す必要がありました
- 品質スタッフ部門の担当者が確認する場合、チェックシートが保管されている工場の中に入るための準備が必要なため、さらに時間を要していました。
導入から定着までの取り組み
電子帳票システム「XC-Gate(エクシーゲート)」を導入するにあたり、チェックシートの電子化に対して社内への取り組み、苦労した点、定着させるための取り組みをご紹介します。
社内へのアプローチ
- 電子チェックシートに置き換える為の承認を得るため、説明会やデモを何度も開催。
- 単純に電子化するのではなく、チェックの基準を見直し、チェック内容の精査や削減も併せて実施。
- 品質マネジメント上、規格として電子チェックシートを正とし、紙から強制的に置き換え。
利用する作業者への説明会・デモを何度も実施し、社内での電子帳票システムの認知度アップに努めました。そして、チェックシート内容の精査も同時期に行い、電子チェックシート=正しいチェックシートとすることで、紙のチェックシートを使用する選択肢をなくしました。
苦労した点
- チェックシートの更新の際の承認過程や、記録がどうなるかなど、管理者の理解を得るのに苦労した。
- 電子チェックシート自体を作成するのが大変で(100枚ものチェックシートが存在するので量が多い)生産現場側でなかなか作業工数を割けなかった。
- 一部チェックシートの作成依頼をメーカーに行ったが、実運用に沿った内容にするため自社内で修正する必要があった。
紙からタブレットに置き換え、システムを導入するにあたり様々な課題も生じましたが、下のとおり取り組むことで解消していきました。
定着させる為の取り組み
- 体制を組み直して製造ラインから2名を1か月間電子チェックシート作成の担当者として割り振り、作成に集中してもらった。
- XC-Gate導入の要素として、下の図のように仕事を3つに分けて役割と責任を明確にした。
導入時、チェックシートの電子化に対する役割分担を行い、役割を明確にすることでスムーズにXC-Gateを定着させることができました。
XC-Gateの活用内容
製造では生産管理に関する約100枚ものチェックシートを電子化しました。実際の運用や現場の声をご紹介します。
<管理者>
・準備、承認、保管作業が格段に楽になった。
※アドイン機能を追加し、承認についてはチェック内容を自動で良否判定させ、「良」であれば内容を全て見なくてもクリックで承認できるようにした。
・お客様からのご指摘にも迅速に対応できるようになった。
<スタッフ部門>
・品質系、設備系のチェックシートにも徐々に展開を進めている。
例)工事業者の持ち込み道具チェック
今までは工程内に持ち込む道具は写真を撮影、事務所に戻って印刷し、持ち出し時に印刷した写真をもとに、全数持ち出ししているかチェックを行っていた。
これを電子チェックシート化したことで、タブレットで撮影し、どの端末からでもアクセスして、チェック&保存することができるようになった。
作業者にとっては紙の方が使い勝手が良いといった声もありますが、それよりも電子化したメリットの方が大きく表れています。
2次的な効果
スタッフ部門では、品質や設備に関するチェックシートの電子化を徐々に進めており、工事業者の持ち込み工具のチェック作業を電子化しています。こういったチェックシートを電子化していくことで二次的な効果も生まれました。
XC-Gateの導入と同時とタブレット端末(iPad)を導入し、タブレットを活用することで交代引継ぎの際にカメラで撮影した画像を使用したり、ネットワーク経由でデータを共有できたりするようになり、作業効率が向上しました。
以前は、デジカメで撮影して有線で接続した後にデータをダウンロードし、情報共有や報告書作成を行っていたため、作業が多く時間がかかっていました。
今後の展開
現在、XC-Gateは3プラントで使用されています。今後は主力工場へ、順次XC-Gateの展開を予定しております。
また、XC-Gateの導入と同時に導入したタブレットは、当初12台だったものが60台にまで増え、利用が拡大しています。
タブレットの利用は今後も更に拡大予定です。棚卸業務などでは、まだ紙での運用が残っています。
これらの紙のチェックシートについても、基幹システムと連携させ、さらなる業務効率化につなげていきたいと考えています。
また、XC-Gateは人作業のデータ化をメインとしており、機械・設備データはSCADAへ保存しています。これらのデータをBIツールで複合的に収集し、さらなる業務の効率化も検討していきたいと思います。
そして、ただ業務を効率化していくだけではなく、ハウス食品として「働きがい変革」の実現を目指しています。
<作業者>
・電子チェックシートだけでは作業工数削減にならないが、チェック内容の見直しも行うことで作業工数削減につながった。
・モノクロからカラーになり、ミスや漏れも分かりやすい構造となったため、チェックのしやすさが向上した。
・紙はすぐめくれるが、電子チェックシートでは別のチェックシートを表示する画面遷移に多少時間が掛かるため、少し手待ちになる。(5〜9秒)